同期会・同窓会ひろば
寺崎央くん、逝く
「海城36会」の一員で、本誌でも紹介された『癌一髪』(マガジンハウス)の著者・寺崎央くんが、旧年の平成24年12月16日、その癌で逝った。69歳だった。
寺崎くんは大学卒業後、大手出版社勤務を経てフリーの編集者・ライターに転身し、『週刊平凡パンチ』を主たる舞台に活躍。『ポパイ』『ブルータス』の創刊エディターに参加した。還暦を過ぎてからも意気軒昂。既存出版界の低迷を叱咤するかのように、型破りの雑誌『オレキバ』(六曜社)の立ち上げに、中心メンバーとして加わる。
この雑誌のサイズがちょうど新聞を2つ折りにした大きさで、キャッチコピーが「いゝ大人の、えゝ大人による、えい加減の雑誌」。「オレキバ」は、片方の牙が折れた老マンモスの意で、要するに牙が折れようと年を食おうと卑屈にならず、群れに属さず堂々とやりたいことをやり、言いたいことを主張する。残念ながら資金続かず2号で消滅したが、その志、内容ともに、安全第一で挑戦をしない出版ジャーナリズムに一石を投じた。
映画、文学、写真、旅行、クルマ、ファッション、スポーツと取材対象は広く、軽妙にして洒脱な文体とともに異能ぶりを発揮する。高校時代、「オヤジが町医者だから頼んでやるよ」と、”よからぬ病”に罹った友人の窮地を救った逸話もある。彼のお世話になった人間は多いはずだ。
『癌一髪』では、癌に取りつかれた自らを客観的に観察し、楽しんでしまうという編集者魂を見せてくれた。「伝説の才人」の卒然たる死を惜しむ。合掌。
画像:『癌一髪』表紙
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